東京高等裁判所 昭和25年(う)216号 判決 1950年5月17日
被告人
青木周平
主文
本件控訴はこれを棄却する。
理由
控訴趣意書第一点について。
仍て按ずるに、本件につき渋谷簡易裁判所判事成田彦政が、昭和二十四年十一月二日起訴前の強制処分として、被疑者たる本件被告人に対し、勾留状を発し、同年十一月七日同事件につき、公訴が提起せらるるや、同判事が同裁判所判事として第一審の審理判決をしたことは、所論の通りであるが、右は刑事訴訟法第二十条所定の裁判官が、職務の執行から除斥される場合の何れにも該当していないので、その同判事が職務の執行から、除斥されることがないことは勿論であるのみならず、記録に徴すれば、本件被告人及弁護人は、右審判に際し同判事に対し、不公平な裁判をする虞ありとして、忌避の申立をした形跡の見るべきものなし、却て右審判に際し同判事が、本件訴訟関係人に対し、事件の審判に当る裁判官は、先に被告人に対し勾留処分をして居るが、之に対し意見ありや、と問いたるところ、訴訟関係人は何等差支なしと述べ、之に同意している事実を認め得るので、被告人に対し勾留処分をした裁判官は、一応事件につき予断を抱いて居り、斯る裁判官が、審理判決した原判決は違法であるとする弁護人の主張は、之を採用し難い。論旨は理由がない。